キックオフツアーの開催から約1ヶ月。それぞれのチームで打ち合わせが重ねられ、製品化に向けてのサンプルや型づくりが順調に進んでいる。いずれもワクワクと完成が楽しみになるものばかりだ。

そんなある日、高岡・伏木にある古刹『勝興寺』にて、シマタニ昇龍工房×未(ひつじ)音制作所チームによる「おりん」のレコーディングが行われた。

「おりん」の「レコーディング」とは?なんとも不思議な気持ちで現場に向かうと、本堂にはぐるりと置かれた大小様々な「おりん」たち。高い音から低い音まで、いくつもの音波がうねりになって、空間に響き渡っていく。この音から、何がつくられようとしているのだろう。

「細胞が活性化するみたい。お寺で聴くと、やっぱ、すごいですね」

未音制作所の若狭さんが興奮した面持ちで言う。「お寺で何かやるのは初めてなんですが、イベントとかライブじゃなくて、おりんで何かしたいとずっと思ってたんです。好きなんですよね、おりんの音」

手のひらサイズから数人がかりでないと運べない巨大なものまで、「とにかくありったけを持ってきた」とシマタニ昇龍工房の島谷さん。「おりん」たちが円形に並んでいる姿は、動物の群れにも似て、なんだか生きているよう。

若狭さんはそのひとつひとつに内側と外側の二方向からマイクをあて、波長が消える最後の一瞬まで、音を余さずに収めていく。マイクは円の中心にも全方向の音を拾うものが据えられ、個別に鳴らされた音と、全ての「おりん」が鳴らされ響きあう音とが採集された。

時は夜。かすかな灯が燈されただけの敬虔な空間で鳴り響く「おりん」。体の芯に響く音は波のようで、次から次へと寄せる波に飲み込まれて、別の場所に連れていかれる感覚になる。

「音は素材で、それをどう料理するかが音楽家の仕事です」と若狭さん。

現在予定されているのは、採集した音をもとに5曲程度のコンセプトワークのような楽曲をつくること。楽曲はCDとしての販売や、暖かくなった春頃には勝興寺でのライブイベントも考えたいという。ぜひ高岡のこの空間で、楽曲になった「おりん」を体感したい。

レコーディングの翌日には、菅笠の高岡民芸工房にて打ち合わせが行われた。進んでいるのは菅笠を利用した「スピーカー」の制作。軽く質感の柔らかな、 インテリアに調和するものが目指されている。

こうした制作風景、音の採集風景は動画作品、またアートブックのようにCDと合わせて販売する案も計画されている。音楽、写真、動画、ライブ…さまざまな方向から魅力を引き出される、おりんと菅笠。どんな姿をみせてくれるのか、期待が高まる。

能作×Hamanishi DESIGNが製品化を進めているのは「真鍮の燭台」。昨年度のモデルツアーにも参加したデザイナーの鎌田さんからは、金属を「溶かして」つくる高岡銅器の製法と、ロウソクが「溶ける」現象をリンクさせさた、ロウソクの熱で燭台自体が溶けかかっているようなデザイン案が届けられた。

ゆらめく炎。静けさ。部屋を暗くしてロウソクの光で過ごす時間は、お寺の空間体験やおりんの音色にも通じる、日々のせわしなさから離れた、ふっと息をつけるものになるはず。

燭台=必ずしも仏具ではないが、この製品を使う人が感じとるものは、仏具としての高岡銅器に連なる、精神性を帯びたものかもしれない。

「まず何より、去年繋がった高岡とこうしてまたプロジェクトができることがとても嬉しいです。様々な縁に感謝しつつ、種まきが実ったような喜びもあります。学生の頃からの憧れの企業である能作さんと一緒にものづくりが出来ることにワクワクすると同時に、今クリエイターとして何をすべきかを考え、未来に向けた提案ができる様に、身を引き締めてプロジェクトに向き合おうと思います(鎌田さん)」

漆器くにもと×MOLpでは、大きく分けて3つのラインで取り組みが進んでいる。

1つは、漆に興味を持つきっかけとしての『アクセサリー』。「漆だから」ではなく、「欲しい」と手に取ったものが実は漆だったという回路を開くことで、漆を知ってもらう。2つめは、もともと漆器くにもとさんへ依頼がきていた利賀村にあるオーベルジュへの提案食器。こちらは越中和紙も利用し、すべて富山の素材を使った製品開発を進める。そして3つめが、食洗機と電子レンジに対応する漆器の開発だ。

「伝統的な漆器にソザイを四則演算することで、現代のライフスタイルに合わせた、漆器への関心を高めるプロダクトを生みたい」というMOLpの皆さん。

四則演算するとはどういうことだろう?

「漆の性質はそのまま活かしながら、生地の木の部分を変えようと思っています。新素材を加え、掛け合わせる、木を引く、木じゃなくてもいいと割り切る、、、食洗機と電子レンジに対応する漆器はすでにあるので、他でやってないことを試みたい。詳しくはまだ言えませんが、楽しみにしていてください(MOLp宮下さん)」

竹中銅器×TAKASHI TESHIMA DESIGNが取り組むのは、4つのラインでの製品企画案。

1つは、竹中銅器に蓄積されてきた素地サンプルを分解して、別の商品に生まれ変わらせるというもの。例えば香炉を輪切りにして小物入れに、花瓶を切断して二つのカップに。この製品は元は何だったのか?想像を巡らせながら使うのも楽しそうだ。

2つめは、富山の代表的な観光スポット、黒部渓谷の色彩を再現する和食器と箸置きのセット。

3つめは、外側を磨き上げたソリッドな塊の中に、ひび割れた内側を緑青で仕上げた花器。水を注ぐことで錆が進行し、質感が変化していくことを想定する。

そして4つめは、デザイナーの手嶋さんがキックオフツアーの際にも話されていた、金属のピカピカに磨かれた質感と、緑青がグラデーションで表現されたタンブラーなどの器。

磨きと、錆び=緑青といった金属の化学変化を利用した着色は、きらびやかさと侘び寂びの、ある意味で真逆の価値観ともいえる。それが技術的にどう叶えられるのか、またそのものを見たときに私たちは何を感じるのか、興味深い。

「高岡ツアーや工房見学から始まり、実際のデザインや試作まで、普段手掛けている量産プロダクトとは異なった視点で取り組むことができ、非常に面白く興味深く取り組んでいます。部分的なサンプルが少しずつ上がってくるなかで、当初の想像通りにはいかない点も出てきていますが、それらも含め、変化させながらブラッシュアップしていければ(手嶋さん)」

佐野政製作所×shy shadowのチームでは「三次元の国旗」のオブジェの木型サンプル製作が進行してる。

デザイナーの芳村さんは、当初は動物の形をした靴べらのイメージラフを起こしていたが、靴べらはよくある製品だということで仕切り直し。打ち合わせを重ねるうちに、芳村さんが以前から温めていた『国旗を3Dにする』アイディアを提案、佐野政さんが強く気に入ったことで、方向性が一気に定まった。

「なんていうか、波長が合うんです。佐野さんと出会わせていただいたことを感謝してます。物事を常に違う角度で観察する必要性を感じる最近、日本人、世界の人々があらゆる角度で自国、他国を見ることが出来たら、新しく面白い発見があるのではと、オブジェを通じて問いかけられたら(芳村さん)」

素材は真鍮で、着色はせずに、サンドブラスト、ミラーフィニッシュなどの表現の磨き具合で国旗の色素を表現する予定。「佐野政さんは表面加工のプロだと感じたので、その技が活きるものにしたい」と芳村さん。

国旗を三次元で解釈したらどうなるんだろう?ぜひつくってみよう!そうして意気投合して進んでいくものづくり、なんだかとても楽しそうだ。

伝統の技術は技術としてあるものだけど、それを形にするのはそれぞれの人であり、その人らしさがその工房らしさでもある。デザイナーや作家ももちろん、感性や発想を持った生身の人。

人がいて、ものがあるのであって、逆ではないこと。その先にはさらに、人がいること。Creators Meet TAKAOKAは、そんなことを改めて実感できる取組みかもしれない。

いよいよ次回は各チームの取組みがプロトタイプとして着地する。人と人の出会いがどんな結晶を生み出すのか、どうぞお楽しみに。

シマタニ昇龍工房×未音制作所 Photo by Shingo Kurono

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